電子顕微鏡で見るコロナウイルスの姿
こんにちは。
当ブログにお越しくださりありがとうございます。
最近、コロナウイルス関連のニュースで下の写真がよく使用されています。皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。
これは国立感染症研究所が提供している写真です。この何気なく目にしている写真の裏側には『見えないものを見る』ことを可能にした科学技術の発展があります。
今回は『電子顕微鏡』という特殊な顕微鏡を使ってコロナウイルスを観察する方法について紹介します。
コロナウイルスは肉眼では見えない
コロナウイルスは肉眼では見えません。
コロナウイルスの大きさは0.1um(マイクロメートル)程度です。それに対して人間の目で見える限界の大きさは0.1mm(ミリメートル)くらい。
1umは1000分の1mmですので、コロナウイルスは肉眼で見える限界の1000分の1くらいの大きさであり、まったく見えません。
光学顕微鏡でも見えない
それでは顕微鏡なら見えるかというと、一般的な顕微鏡である『光学顕微鏡』では見えません。
光学顕微鏡は名前のとおり『光』をあててレンズで拡大して見る装置です。目に見える光(=可視光)の波長は0.4~0.8umくらいであり、これより小さいものは見えません。
コロナウイルスの大きさは0.1umですので、光学顕微鏡で見える限界の大きさよりもさらに小さいことになります。
電子顕微鏡を使うとコロナウイルスが見える
『電子顕微鏡』という特殊な顕微鏡を使うと、コロナウイルスが観察できます。
電子顕微鏡は可視光の代わりに電子ビームを用いるのが特徴であり、電子ビームは光の波長よりずっと細く絞れるので、ものすごく小さい物体が観察できます。
では、実際にはどのように観察しているのでしょうか。
いくら性能が高いといえど、コロナウイルスを一個だけとりだして観察するというわけにはいきません。それは大洋に浮かぶ一艘の小舟を探すようなものです。
電子顕微鏡の装置内でウイルスを見つけるには、たくさんのウイルスが密集した状態にして観察する必要があります。
また、そのまま見てもウイルスの形が判別できるとは限らず、何らかの『前処理』が必要となります。
これは推測ですが、くだんの写真ではコロナウイルスの周囲が黒く観察されるような前処理(専門用語ではネガティブ染色といいます)をしてから電子顕微鏡観察していると思われます。
ウイルスを直接見ることの意義
電子顕微鏡が初めて開発されたのはいまから約90年前の1932年です。それ以前はウイルスを直接観察する方法はなかったため、科学者たちがいくら探しても見つかりませんでした。
さまざまなウイルス感染症を引き起こす正体を直接観察できるようになったことで、ウイルスについての研究が大きく進展しました。
それから現在にいたるまで、電子顕微鏡観察はウイルスを検出する重要な手法であり続けています。
なお、最近はコロナウイルス感染の判定にPCR法と呼ばれる遺伝子を増殖させる検査法が用いられています。
電子顕微鏡よりも迅速検査が可能である反面、PCR法は遺伝子配列がわかっている場合にしか適用できません。
未知のウイルスを調べるためには、やはり『直接観察する』のが有効です。
電子顕微鏡観察のデメリット
ウイルスの検出に有効な電子顕微鏡ですが、いくつかのデメリットもあるので記載しておきます。
・既述のとおり、電子顕微鏡でコロナウイルスを観察するにはある程度高い濃度の検体が必要です。つまり、電子顕微鏡観察は感度が低い検査法といえます。
・コロナウイルス観察に使われるような高性能の電子顕微鏡の値段は数千万円以上と高額であり、簡単に設置することはできません。
・前処理と観察には熟練の技が必要であり、誰でも簡単に見れるわけではありません。
まとめ
人間の目で見える限界の大きさの1000分の1しかないコロナウイルスを、電子顕微鏡を使うことで直接観察することができます。
電子顕微鏡の出現により、ウイルス感染症に関する研究は大きな進展を遂げました。
最近ではウイルス検査の主流はPCR検査法ですが、未知のウイルスを調べる場合など依然として『直接観察すること』の重要性は変わりません。
とはいえ、街中や公共の施設など人が集まる場所において、『どこにコロナウイルスが潜んでいるか』を調べる方法をわれわれはまだ持ち合わせていません。
いまから100年前には見えなかったウイルスを直接観察する方法が発明されたように、科学技術の進展はいつか、『環境中に存在するウイルスをそのまま見る』方法を見つけ出せるのかもしれません。
そんな未来が来ることを期待しつつ、いまは自粛の日々を送っていきたいと思います。
さいごまで読んでくださり、ありがとうございました。
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