働き方改革で苦境に立たされる中間管理職の悲哀
こんにちは。
いま、中間管理職がピンチを迎えています。
働き方改革が進行する中で、逆に中間管理職の業務量や心理的負担は増大しているのです。
私自身、中間管理職の一人として同じことを感じていたのですが、その感覚を裏付ける調査結果がパーソル総合研究所から出ていたので、今回はその内容について紹介します。
これは企業の人事部門や経営層が知っておくべき内容だと思います。
私はこの調査結果をみて、『自分の会社だけじゃないんだ』『みんな同じようにたいへんなんだな』と少し気が晴れました。
一方で、日本の社会が抱える大きな問題の一つだと危惧しています。
働き方改革と中間管理職の負荷の関連性
まず、次に示すグラフをご覧ください。
(出典):中間管理職の就業負担に関する定量調査
このグラフから、働き方改革が進んでいる組織では、進んでいない組織と比べて業務量の増加、人手不足など昨年と比べていずれの項目も負荷が高くなっていることがわかります。
これは働き方改革を進めるとき、業務量の削減や効率化の推進が不十分なまま、働く時間を減らすという側面だけが強調された結果です。
その結果、残業削減の対象外である管理職は、部下の手の回らない仕事をカバーするなど、さらに負担が大きくなります。
しかもコスト削減への要請もあるため、忙しいからといって簡単に人を増やすこともできません。
そんな状況下で中間管理職は
- 『休めない(心理的、肉体的疲労が蓄積する)』
- 『学べない(自身の能力向上に時間を使えない)』
- 『育てられない(後継者がつくれない)』
- 『生み出せない(付加価値の高い仕事に集中できない)』
という四重苦に陥っています。
人事部門との認識のずれ
中間管理職の負荷が増えている一方で、人事の意識は別の方向を向いています。
(出典):中間管理職の就業負担に関する定量調査
管理職本人は人手不足や後継者がいないことをもっとも課題と感じているのに対し、人事部はコンプライアンスやハラスメントなど、最近増えてきた新しい組織課題への対応が『管理職が抱える課題』と認識しているのです。
この認識のズレはさらなる悲劇を産み出します。組織の課題解決には『中間管理職の能力向上が必要だ』と考えた人事部が、コンプライアンス研修、ハラスメントケア研修などを企画し始めるのです。
中間管理職本人は『人手不足で忙しくて首が回らない』と苦しんでるのに、そちらの改善には目を向けずに負荷を上乗せするという悪循環です。
人事への改善提案
報告書では、まずは中間管理職の業務内容を洗い出して現状を正確に把握することが重要であり、そのうえで次のような対策をすべきだと提言しています。
- 不要な役割の廃止
- デジタル化やIT化推進による業務効率化
- 職場内での業務シェア(ベテラン社員に役割を与えるなど)
- 社外への業務委託(アウトソーシング)
- 適切な権限委譲(不必要な調整をなくし判断を速める)
中間管理職への改善提案
もちろん、環境の変化に合わせて中間管理職自身も働き方を変えていく必要があります。報告書で提言しているのは、マイクロ・マネジメントから『信頼』と承認』のマネジメントに変えていくことです。
前者は部下の業務内容や行動を細かく把握して管理するやり方です。
一方後者は、部下を信頼して仕事を任せ、部下の仕事のプロセスや成果を認める方法です。
下のグラフは、マイクロマネジメントと比べて信頼・柔軟型マネジメントのほうが、部下の離職が少なく、パフォーマンスが高いことを示しています。
(出典):中間管理職の就業負担に関する定量調査
まとめ
働き方改革によって、中間管理職の業務量や心理的負担は増大しています。
中間管理職の疲弊が蓄積することで、内側から組織の活力を奪っています。
そのことに早く気づいて対処しないと、企業の存続にとって取り返しのつかないダメージを受けてしまう恐れがあります。
『そこの社長さん、人事部長さん、あなたの会社は大丈夫ですか?』
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