結局、つみたてNISAって儲かるの?~投資信託運用に期待できる未来~【最終回】
つみたてNISAを理解するには、運用商品である投資信託について知ることが必要です。
そこで、「投資信託運用に期待できる未来」をテーマに、数記事に分けて解説してきました。
結局、つみたてNISAって儲かるの?~投資信託運用に期待できる未来~【第1回】
結局、つみたてNISAって儲かるの?~投資信託運用に期待できる未来~【第2回】
結局、つみたてNISAって儲かるの?~投資信託運用に期待できる未来~【第3回】
最終回では、「投資信託を30年続けたらどうなるか?」をシミュレーション結果から考察していきます。
一般的なシミュレーションだと本当の未来は分からない
つみたてNISAのシミュレーションでよくあるのが、「積立額」「年数」「利率」を入力して将来のリターンを計算するものです。
たとえば、毎月3万円を、30年間積み立てて、年利5%で運用できた場合、下のグラフのようになります。
元本1,080万円が、約2.5倍の2,497万円に増えています。
本当にこれだけ増えるんだったら、誰でもやってみたくなりますよね!
参照元:積立かんたんシミュレーション(楽天証券)の結果に筆者加筆
しかし、このシミュレーションには致命的な欠点があります。
それは「実際の利率は結果が出ないと分からない」ということです。
投資信託の運用は定期預金のように利率が決まっていないので、5%の利率になる保証はまったくないんですよね。
では、どのように考えればよいでしょうか?
将来リスクのシミュレーション
株式型の投資信託の運用には、リスクが伴います。
ここでいうリスクとは「危険性」ではなく、「リターンの振れ幅」のことです。
リターンの振れ幅とは、値段が上がってプラスになるときもあれば、逆に下がってマイナスになるときもある、ということ。
そして、過去のデータを元にして、将来のリスク(リターンの振れ幅)を予測するシミュレーションを行うことができます。
シミュレーションには、「ウェルスナビ」のサイトを利用させていただきました。
ウェルスナビは分散/積立/長期運用を「お任せ」でやってくれるサービスで、最近人気がでています。
なお、ウェルスナビでは投資信託ではなくETFを利用している点や、シミュレーションには株式だけでなく債券等も少し含まれている点など、厳密には外国株式型の投資信託のみで運用した場合と異なります。
しかし、未来予想のイメージはつかんでいただけると思います。
どれくらい儲かるか?は分からない
毎月3万円を積み立てしたときの元本の推移が、下のグラフの赤線になります。
(シミュレーションでは初期投資額が最低10万円しか設定できなかったので、30年後の元本は、10万円+3万円✖12ヵ月✖30年=1,090万円となっています)
参照元:WealthNavi(ウェルスナビ)のシミュレーション結果に筆者加筆
30年運用した場合、元本1,090万円が70%の確率で1,914万円以上になります。
さらに、50%の確率で2,519万円以上に、30%の確率で3,363万円以上になります。
なんと30年で投資額の3倍以上に増える可能性も、3割くらいの確率であるわけですね。
上のグラフでは、20年、30年と年数が経つほど、リターンの幅が広くなっていることも分かります。
未来になるほど「リスク(=リターンの振れ幅)」が増していき、最終結果は予測困難になるということです。
残念ながら「どれだけ儲かるか」を正確に見積もることは出来ないのです!
元本割れする可能性は?
多くの人にとって「損をする可能性はないの?」ということは気になると思います。
運用の結果、元本割れする(投資した金額を下回る)可能性はどれくらいあるでしょうか?
ウェルスナビのシミュレーションでは、元本割れの可能性を数値化することは出来ませんでした。
そこで、「明治安田アセットマネジメント」が提供しているシミュレーションサイトを使って計算してみました。
(厳密には誤差がありますが、なるべくウェルスナビのシミュレーションの条件に近くなるように調整した数字です)
その結果、下のグラフに示すように、運用年数が増えるほど、元本割れの可能性は下がっていくことが確認できました。
参照元:明治安田アセットマネジメントの投資シミュレーションを元に筆者作成
1年間だけの運用だと、4割くらいマイナスになる可能性があります。
5年間の運用でも、4分の1の確率で元本割れします。
そして運用が20年を超えてくると、元本割れの可能性は10%を下回ってきます。
しかし、決して「損する可能性がゼロになる」ことはありません。
最後に
ここまでの結論を簡単にまとめてみます。
- 世界の株式市場に分散して長期運用すれば、将来資産を大きく増やせる可能性がある
- 運用期間が長いほど、リスク(=リターンの振れ幅)は大きくなり、どれくらい儲かるか予測困難になる
- 運用期間が長いほど、元本割れする(マイナスになる)可能性は減少していく
確実な未来というのはありません。
リスクをとった人だけが、相応したリターンを得ることができる、ということですね。
預貯金を選択して、資産が減らない(増えない)未来をとるのか。
資産の一部を世界の株式市場に投資することで、予測困難ながらも増える可能性が高い未来をとるのか。
違いを理解した上で、自分で選択していけばよいのかな、と思います。